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2020.08.29
気候変動リスクが新たな投資判断材料に
台風や豪雨などの自然災害が頻発するなか、気候変動リスクへの対応が急務になっている。ESGを重視する投資家の間では、「E」(環境)への対応が投資判断の要素として重要性を増しており、企業側も気候リスクを可視化する動きを加速させている。
地球の平均気温上昇を2度未満に抑えた場合、主要原料の調達コストは2050年に5%程度、4度上昇した場合は30%超増加する。キリンホールディングスは7月14日、2020年度の環境報告書を公表し、地球温暖化の進行は、自社が生産する飲料の原料となる大麦やホップなどの収穫量を大幅に減少させ、調達コストを引き上げるとのシナリオを示した。また栽培に適している地域別に気候変動が与える影響を図式化し、「大麦に依存しない代替糖を用いる発泡酒などの生産も進めている」という。
併せて開示した感染症の影響分析では、4度シナリオにおいて、マラリアとデング熱の感染リスクにさらされる人口の増加率を試算。ベトナムでは50年に、デング熱の感染者増加が同国の乳酸菌飲料市場を約970億円拡大させるという影響を示した。
国際石油開発帝石は、低炭素社会への移行や再生可能エネルギーのコスト低下が石油ガスの需要や価格を下げるリスクを示した。対策として、油価が1バレルあたり50ドルで推移した場合も安定した事業運営体制を維持することなどを掲げている。三菱UFJフィナンシャル・グループは、自然災害の被害を受けて融資先の事業活動が止まったり、不動産の担保価値が毀損したりして、与信ポートフォリオに影響を与える間接的なリスクを開示している。
候変動リスクは「物理的リスク」と「移行リスク」に分類される。物理的リスクは、台風や洪水によるサプライチェーン(供給網)の途絶や建物の破損など、事業の継続を脅かすリスクを指す。
一方、移行リスクは、地球温暖化対策の環境規制などによって、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い事業の収益性が悪化するといったリスクをいう。
こうした非財務情報は、貸借対照表などの財務情報には表れず、投資家を主な対象とした統合報告書のほか、より広いステークホルダー(利害関係者)を対象としたサステナビリティレポート、環境報告書などの形で公表することが多い。