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2020.11.03
大統領選と世界経済
米大統領選の行方を巡り株式市場は神経質な動きが続く。欧州では新型コロナウイルスの感染が再拡大に転じつつある。不透明な市場と世界経済の先行きについて、米有力運用会社PGIMのデイビッド・ハント社長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。
――市場の視点では米大統領選はどのようなものに映りますか。
「非常に特異なものだ。従来、投資家の関心は減税に向けられ、共和党を支持する傾向が強かった。しかし、今年の焦点は財政政策だ。バイデン氏が公約どおり法人税率を引き上げれば、企業の利益が減少する要因にはなる。しかし、市場の関心はどちらの候補の政策が総合的にみて、成長を促進するだろうかという点に向いている」
「増税するが大型の景気対策をとるとみられるバイデン氏か、何らかの減税を打ち出す可能性もあるが景気対策は限られた規模になりそうなトランプ氏か。投資家はバイデン氏の政策が今後数年は、米国経済をより成長させると判断しているようだ」
――米国と世界の景気がコロナ禍を脱して回復に向かうか重要な局面です。
「世界経済が全体として2019年レベルの規模に戻るのは2022年末にかけてだろう。私たちの景況感は国際通貨基金(IMF)の最新の成長率見通し(20年マイナス4.4%、21年5.2%)より少し慎重だ。最大の懸念はコロナ禍が再び広がり、経済活動が制限され始めた欧州だ」
「欧米を比べると、英国やフランスなど欧州は政府が公的資金で雇用を支える一方、米国は企業の一時解雇により失業率が上昇している。目先の失業の増加を容認し企業の回復を早める米国経済のダイナミズムが今回も発揮されるか、よく見ていきたい」
――米国ではIT(情報技術)企業が巨大になりすぎたことへの警戒感も強いようです。
「議論が単純化されすぎているのではないか。IT企業の競争力の源泉はネットワーク効果にある。多くの人がネットワークに参加すれば利潤が高まるというビジネスであり、巨大独占で法外な利益を追求しているのではない」
――米国と世界経済の覇を競う中国への見方は。
「経済構造を輸出主導から消費・内需主導へと驚くべき速さで転換している。多くの金融機関が中国に進出し、投資資金の流入も途絶えていない。ある期日をもって資本を自由化するといったビッグバン型の改革は考えにくい。しかし、中国は10年単位でみれば漸進的に市場開放を進めるだろうし、経済や通貨の地位も上がっていくだろう」
――資本市場ではESG(環境・社会・統治)投資が拡大しています。
「長期の投資家がESGの要因を考慮しないことの方が奇妙に思える。私たちが保有する債券はすべてESG格付けをしている。これは運用者が負うべき不可欠の責務でもある。企業が短期志向を強めると、目先の利益は上がるだろうが革新力は衰える。コロナの大流行は経営者が改めて長期のことを見据える、潮の変わり目になりうる」
-日経新聞より-